「からころも 君が心のつらければ
たもとはかくぞ そぼちつつのみ」
劇中に度々登場するこの歌は、不器用な末摘花が源氏の君のために一生懸命に考えて贈った歌。
その意味は、
「光る君様のお心が冷たいので、私の袖はこうして涙に濡れてばかりです」
そんな歌に象徴されるように、末摘花は、逢瀬ののちに、源氏の君にすっかり忘れ去られてしまうのです。
「なつかしき 色ともなしになににこの 
末摘花を 袖にふりけむ」
(意訳: とくに心魅かれる色でもないのに、どうして、この末摘花(べに花)に袖を触れて(関係を持って)しまったのだろう)
と、光源氏が詠んだ歌により、彼女は「末摘花の姫君」と呼ばれるように・・・。
数々の美しく才能溢れる源氏物語の女性達の中で、
どこまでも不器用で頑固で、世間知らずな貧乏暮らしの姫君。
夢見るように、どんなことがあっても光源の君への愛を貫き続ける悲恋の姫と
振り回され続ける女房たちの、悲しいやら、おかしいやら、
笑ってはいけないけれどつい笑ってしまう人間喜劇。
千年の時を越え、500人の登場人物を描いた54巻の源氏物語の世界で、
異色の存在を放つ末摘花。
源氏物語の世界の片隅に咲く愛すべき物語を、時代を越えてお届けします。
夢の世界へどうぞご一緒に。
公演会場でお待ちしています!
